福岡県嘉穂郡桂川町にて、35年間古野隆雄、久美子と五人の子供たちを中心に家族で完全無農薬有機農業を行ってきました。
2010年からは長男・隆太郎が就農し親子で有機農業の規模拡大・新しい技術の開発に取り組んでいます。
私は百姓です。田植えがすむと合鴨を水田にはなします。水田輪作の田んぼにはトマト、ナス、かぼちゃ、おくら、すいか、きゅうり、インゲンサトイモ、きゃべつ、レタス、ごぼう、なんでも作っています。山で鶏も飼っています。ドジョウも田んぼに放しています。
鳥小屋や倉庫は自分で作りました。土木、大工仕事もします。山仕事もします。可能な限り何でも自分でします。百の仕事をするから百姓なのです。そして何でも作るから百作なのです。
創意工夫の世界。それが百姓百作です。
有吉佐和子の『複合汚染』に影響を受け、78年から完全無農薬の有機農業を目指して奮闘努力してきましたが、最初の10年間は苦難の連続。「完全無農薬なんてできるわけがない」と言われながらも志を曲げずに、夫婦で草取りに明け暮れる日が続きました。
88年、置田敏雄さんの「合鴨除草法」を知ったことで希望の光が差しましたが、合鴨が野犬に襲われたことで、再び窮地に追い込まれます。それでも合鴨をあきらめきれない。背水の陣で野犬との闘いに挑んだものの、何をやってもうまくいかず連戦連敗の3年間。「自分だけが完全無農薬に挑戦して、失敗ばかりしている。ほんとうにバカ
なんじゃないか」と思いつめ、絶望的になっていたのです。
万策尽きた私達は、気分転換を兼ねて、山間の村に住む妻の姉を訪ねます。そこでイノシシ防御のための電気柵を見つけ、田んぼに応用したところ大成功。3年におよぶ野犬との闘いに見事に勝利したのです。
その後もさらなる創意工夫を重ね、たどり着いたのが「合鴨水稲同時作」の技術です。「有機農法であっても効率を求めるのは当然のこと。手間がかかるのは技術が完成していないから。誰でも簡単にできる技術をつくりあげ
ることが重要だと、合鴨が教えてくれたんです」
循環型農業という「アジアの暮らしの原点」を守っていきたい。最近は水田にドジョウも放しています。50年代のように、田んぼで子どもたちがドジョウを捕まえる姿を復活させるのが夢。昔の田んぼには魚もいた。稲作と畜産、水産を同時にやれば、田んぼは子どもたちのワンダーランドに変わります。